税制適格退職年金制度(適年)

税制適格退職年金制度の特徴

 適年は、企業の退職金制度を企業年金契約として、主に生命保険会社もしくは信託銀行が受託して行われる制度です。厚生年金基金制度のように、特別法人が介在する制度とは異なります。
 適年は、1962年の「適格退職年金税制」に基づいて導入された制度です。
 それ以前の税法は、企業が従業員の年金支払のために社外積立を行っている場合、その積立金は積立時点で、従業員への給与とみなされて課税されていました。そこで、積立時に従業員への課税を行わない措置をとることを企業から要望され、適年が導入されることになりました。
 「適格」というのは、この税制優遇措置が適用される適格な年金という意味であり、適格と認められると、積立金(掛金)が全額損金処理扱いで社外積立が出来るため、積立時点において、従業員への所得税課税は行われず課税が繰り延べられる事になります。
 適年を新たに導入する場合、または契約内容を変更する場合には、生命保険会社もしくは信託銀行を通じて国税庁に必要事項を記載した申請書を提出し、国税庁の承認を得なければなりません。

税制適格要件

法人税法施行令159条に規定されている以下の要件を満たす必要があります。

 

@ 目的
 

退職年金の支給のみを目的とすること(年金に代えて一時金を含む)

 

A 契約の形態
 

事業主がその従業員を年金受取人として保険料を払い込み、生命保険会社等が年金受取人の退職について退職年金を支給することを約したものであること

 

B 役員の除外
 

契約者である事業主およびこれと生計を一にする親族、または事業主である法人の役員がこの契約に加入していないこと

 

C 予定利率の変更の取扱い
 

予定利率は、財政再計算のとき以外には変更を行わないものであること

 

D 適正な年金数理
 

掛金等の額および給付額は、適正な年金数理計算に基づいて算定されていること 予定利率の下限は、省令で定める基準利率以上に設定すること 予定死亡率、予定昇給率または予定脱退率等は、合理的に計算されていること

 

E 掛金算出方法の事前取り決め
 

掛金については、定額または給与に一定の割合を乗じる方法などにより算出された額によることを予め定められていること

 

F 過去勤務債務等の償却
 

過去勤務債務が生じた場合、定額または給与の一定の割合(年35%以下)あるいは未償却残高の一定割合(同50%以下)として毎年償却すること いったん決めた償却割合は、再計算以外原則として変更できない

 

G 超過留保金の取扱
 

財政再計算の結果、年金資産が退職年金の給付に充てるために留保すべき金額を超える場合について、当該留保金額部分については、掛金に充当するか事業主(企業)に変換する

 

H 積立金の事業主への返還の禁止
 

年金支払いのための積立金は企業へは返還しない。ただし次に掲げる場合を除く。 ・ 適格退職年金契約を解除して厚生年金基金に移行する場合で積立金を引き継ぐ場合 ・ 合併、営業譲渡等により他の適格年金契約の受給者となったため、その対応する積立金をその他の適格退職年金契約の掛金として払い込む射場合 ・ 特定退職共済団体に規定された退職共済契約に加入したことに伴い、当該制度に移行するため積立金を引き継ぐ場合(農協組織再編に伴い特定退職金共済制度へ移行する場合) ・ シェア変更があった場合、シェア割合が減少した受託会社から年金支払いのための積立金のうち減少した引き受け割合に対応する部分の返還を受け、シェアの増加した受託会社へ掛金として直ちに払い込む場合

 

I 解約払戻金の従業員帰属
 

契約が解除された場合は、年金給付のために必要な積立金はHで企業に返還されることとなる場合を除き使用人に支給されること

 

J 給付減額の原則禁止
 

給付の減額は、掛金の払込が困難になる等の相当な理由がない場合は行うことが出来ない

 

K 差別取り扱いの禁止
 

掛金または給付の額、その他退職年金の受給要件について年金受取人のうち特定の者につき不当に差別的な取り扱いを行わないこと

 

L 資産運用の制限
 

契約が結ばれていることにより、通常より有利な貸付け、その他の利益を受けないこと

 

M 契約の継続性
 

契約が相当期間継続するのを認められるものであること

 

 

 これらの適格要件に該当しない退職年金は、適格退職年金の適用を受けることが出来ない非適格退職年金として取り扱われ、企業が負担した保険料は税務上従業員の給与として取り扱われることになります。

加入者は15名以上(信託銀行との契約の場合は100人以上であることが多い)必要ですが、厚生年金基金に比べ、必要加入者数も少なく特別法人を設立する必要もないため、一般に中小企業において広く普及しています。
年金給付について、必ずしも終身年金が要求されているわけでもありません。

「確定給付企業年金法」が成立しますと、新たに適年の契約は出来なくなります。また、今後10年以内に「規約型企業年金」「基金型企業年金」「厚生年金基金」あるいは「確定拠出年金」制度に移行することになります。

 

参考資料

鈴木登樹男「この1冊で年金会計がわかる→できる」(ビジネス社)

(株)東京ファイナンシャルプランナーズ

DCアドバイザー講座テキスト

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